按摩(あんま)、指圧、マッサージには違いがあります

按摩(あんま)、指圧、マッサージという名前はほとんどの方がご存知だと思います。
しかしながら、それらには違いがあるということをご存知の方は少ないでしょう。
按摩、指圧、マッサージは手技療法と言われる、施術者が患者さんの体に、主に手や指を使って行う施術方法の種類で、それぞれ違いがあります。
また、「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格がなければ行うことが出来ません。

【按摩】

まず按摩ですが、古代の中国で誕生し日本に伝わったもので、日本には奈良時代に入ってきました。
対象としているのは筋肉です。
施術(せじゅつ)をする時は、衣服の上に手ぬぐいやタオルをかけて、その上から筋肉を揉みほぐすことになります。
「按」は「おさえること」、「摩」は「なでること」を意味していて、東洋医学の基本理念である「虚実(きょじつ)」という概念に応じた使い分けを行い、気血の流れをよくして疾病を治癒に導く施術方法です。
按摩は、体幹(心臓)から末端に向かう遠心性の手技で、“撫でる・揉む・押す・振るわせる・叩く等の手技を組み合わせて行ないます。
また運動療法も行われます。ですから、病気の後遺症で関節が拘縮したような場合も、医師の同意書があれば健康保険による治療が可能となります。
ところで、俗に言う”クイック・マッサージ”はマッサージではなく、按摩なのです。
なぜならば、衣服の上からタオルをかけて筋肉を揉みほぐしていくからです。
しかも国家資格を持たない人が施術を行っているので、昨今トラブルが多く、骨折・捻挫・ヘルニアの悪化などが絶えません。
本来は国家資格を持たない人が施術を行ってはいけないのですが、厚生労働省の怠慢で野放しになっているのが現状です。
(困るのは施術をして体調を悪化させられる国民であり、国家資格を持ちながら仕事を奪われる国民です。)
体の不具合を治して健康な状態でありたければ、国家資格を持った人に施術をしてもらってください。
国家資格を持たない人は店舗の名称に「マッサージ」や「あんま」といった言葉を使うことは法律で禁止されているため、「もみほぐし」とか「リラクゼーション」とか「エステ」という言葉が使われています。

【マッサージ】

マッサージはフランスで生まれ、明治以降に日本に持ち込まれた施術方法です。
按摩と同じように手を使って施術しますが、マッサージは皮膚に直接、オイルやパウダー、クリームなどを塗布して、手足の末端から体幹(心臓)に向かう求心性の手技で“揉み擦る”ものです。
対象となるのは血液やリンパ液です。
例えば腎臓に疾患があって、手足が浮腫(むく)んでしまった場合、このマッサージで体液を流していく治療を行います。
医療行為ですので、医師の同意書があれば健康保険による施術が可能です。
エステサロンという名称でオイルやクリームを使ったマッサージがありますが、それも国家資格を持たない人がほとんどで、店の看板にマッサージとは記載されていません。
マッサージの対象は血液やリンパ液ですから、「リンパマッサージ」という名称は「馬から落ちて落馬する」ような表現となり可笑しいです。
カタカナ表現をすれば良いもののように思わせる宣伝広告だと思って良いでしょう。

【指圧】

指圧は日本で生まれたもので、マリリン・モンローらを施術した浪越徳治郎という人が指圧療法創始者とされていますが、1827年(文政10年、坂本竜馬の生まれる8年前)に太田普斎という人が、“按腹図解(あんぷくずかい)”を著したことが始まりといわれています。
浪越徳治郎氏は日本はもとより全世界に指圧(SHIATSU)を普及させました。
指圧は、疾病の予防並びに治療を目的に、母指を中心として四指’並びに手掌のみを使用し、全身に定められたツボ(経穴のこと)と呼ばれる指圧点を押圧しその圧反射により生体機能に作用させ、本来人間の身体に備わっている自然治癒力の働きを促進させると謳っている日本独特の手技療法です。
私なりの考えですが、経絡や経穴を押圧する指圧療法であるがゆえに、単なる癒しやリラクゼーションではなく、東洋医学に根付いた治療方法だと思っています。
実際にツボを指圧することで体調に変化が見られます。
専門書になりますが、増永静人著の「経絡と指圧」に詳しいです。

細かい違いはありますが、マッサージは直接皮膚にアプローチして、あん摩と指圧は薄い衣服の上から施術を行うものだと覚えるとわかりやすいと思います。
ところで、「足つぼマッサージ」というややこしい名称や「リフレクソロジー」という名称もありますが、東洋医学(鍼灸治療)では、足の裏には一つしかツボはありません。
元々リフレクソロジーはイギリスが発祥です。日本にはリフレクソロジーの国家資格もありません。

按摩、マッサージ、指圧は単なる癒しではなく、医療現場でも活躍しています。

「対象となる疾患であること」「医師の同意書があること」など条件はありますが、あん摩マッサージ指圧は保険取り扱いの対象となっている治療法です。
歩行が困難で医師が同意してくださった場合には、自宅や施設に赴き「訪問マッサージ」をすることが可能です。
この場合も健康保険による治療となり、介護保険を使わなくて済みます。

先にも書きましたが、きちんとした技術を習得していないがために、患者さんに骨折をさせてしまう事例もあるようです。
ボキボキと骨をならすような「整体」や「カイロプラクティック」「ボディケア」も、国家資格ではなく、あくまで民間の資格が存在するのみなのです。
それらのお店では、厳密には「マッサージ」や「あんま」という名称は法律上使えず、あくまでリラクゼーションとしてのサービスを提供している、という形をとっています。
また、医療的な効果を宣伝することも禁じられています。

治療院以外のマッサージ店では、施術者のレベルはさまざまです。お店の講習を受けただけの人や、民間のスクールで短期間学んだだけの人も大勢います。
「あん摩マッサージ指圧師」の資格者は、学校も少ないので、それほど多くないのが実情です。
国家資格を得ようとすれば、最低でも3年間の専門学校に通い解剖学・生理学・病理学などの教育を受け、実技指導を受け、国家試験に合格しなければなりません。
施術所の開設には保健所への登録が必要になります。
健康でありたい、というのであれば、是非とも国家資格を持った人にきちんと治療をしてもらえたらと思います。