東洋医学を学ぶ上で基本中の基本といえる書物があります。
それは「黄帝内経(こうていだいけい)」という書物で、養生の仕方から人間の内臓の働き、経絡(気の流れるところ)や経穴(ツボ)について、人体の解剖や生理、病因・病理・病証、治療の仕方等々、多岐に渡って記載されています。
この書物は、黄帝という伝説上の帝王の質問に対して、岐伯という先生が答えていくという問答形式になっています。
一番最初に出てくる黄帝の質問が、
「なぜ昔の人は百歳を超えても衰える事なく元気だったのに、今どきの人は五十歳ぐらいで衰えてしまうのか。」
という問いかけです。
岐伯は答えて言います。
「当時の人は養生をよく心得、自然の調和を大切にして生活した。また、暴飲暴食も過労もせず、規則正しい生活をし、無理な欲望を持たずに、肉体をほどよく動かして働いた。今どきの人はお酒を果汁のように飲み、過労をかさね、酔っては女を求め、一時の快楽のために生きている・・・・。」
例えば、この最初の問答のように、東洋医学は自然の中で人間がいかに調和を持って生活を営んでいくか、というところを大切にしています。
現代のように、食品添加物があらゆる食品に入っていて、24時間テレビが放映され、深夜まで開いているお店があり、サービス残業が当たり前になり、電車・自動車・エレベーターにエスカレーターなど運動しなくても良い環境が整い、一方で目や指先を酷使するパソコンやスマートフォンが当たり前になり、ある意味本当に豊かな社会になったと思われます。
しかし一方で、そのおかげで何か大切な事を失っているようにも思えます。
そんなあるときに、スキをついたように病気はやってきます。痛みがあれば幸いです。それは体の叫び声です。
体が病気を通して、何か生活上で間違っているところがあるのではないか、心のあり方に間違っているところがあるのではないか、そう問いかけているのだと思います。