背中にも沢山ツボがあります

鍼灸治療の勉強をする時に避けて通れないのがツボの勉強です。
一般的には「ツボ」と呼ばれていますが鍼灸治療の世界では「経穴(けいけつ)」と呼びます。
鍼灸治療は中国がルーツですが、韓国を経て日本に輸入されていく過程で、それぞれの国において名称や場所が多少変わっていったそうです。
そこでWHO(世界保健機構)が中心となって標準経穴部位の策定が行われました。
その経穴は”標準で”361個あるとされています。これは片側の経穴を数えたものですから、両手・両足にも経穴があるので全てを合わせると670個に及びます。
標準ではない経穴として「奇穴、新穴」がありますが、ここでは割愛します。

ところで、手足やお腹はもちろん背中や腰にも経穴はあります。
興味深いのは背中に内臓の名称が付いた経穴があることです。
背部の経穴
図を見ていただくとわかりますが、上から肺兪、心兪、肝兪、胆兪、脾兪、胃兪、腎兪、大腸兪、小腸兪、膀胱兪という経穴があります。
他の経穴も重要ですが、ここでは割愛します。

ツボと内臓との関係

一方西洋医学の解剖学・生理学に出てくる自律神経の図を見てください。
自律神経
経穴の図とほぼ同じように心臓、肺、胃、肝臓、すい臓、腎臓、小腸、大腸、膀胱というふうに自律神経が行き渡っているのがわかります。
先日の「ビールと腰痛」で書いたように、内臓の不調が背中や腰に、筋肉の緊張や関節の痛みとなって現れます。
大昔の人間は内臓の不調と背中や腰の不調が関連することを知っていたのではないでしょうか。

体の歪みの原因は!?

よく患者さんから「体や腰が歪んでいませんか!?」と相談を受ける事があります。
治療家の中にも体のゆがみを治しましょう、という方が多くいらっしゃいます。
それはそれで治れば良いので否定はしませんが、なぜ歪むのか、という原因が大事だと思っています。

東洋医学、鍼灸治療の考え方の一つに、「内臓の不調が様々な病気を作り出す」というものがあります。
人間の体を支えているのは骨だけではありません。筋肉がきちんと働いてこそ支えられるのです。
寝たきりになったり体を起こすのがやっとという状態になるのは筋肉に元気がないからです。

ですから内臓に不調があると、その反射として筋肉が異常に緊張してしまい、骨を引っ張り関節の動きが悪くなります。
内臓の不調が身体に現れる反射を「内臓体性反射」といいます。

背骨矯正しても治らない

内臓の不調が筋肉を縮めるので、結果的に骨格が歪んだり、体を動かすと痛みが出る、ということになります。
特に首から背中、腰にかけて内臓の不調が現れやすく、触れば体調がよくわかります。
ですから、私は患者さんの背中や腰を見たり触れれば、どういう体調か、どういう生活習慣をしているか、ということがわかります。

例えば、喉に痛みやいがらっぽい不快感があるとか、食べ過ぎ、胃のもたれ、甘いものや小麦粉製品の食べ過ぎ、便秘、冷たいものの取り過ぎ、イライラしたことが多かった、あるいはイライライしてる上に運動不足である、等々です。
背中に数多くのツボがあり、それらが内臓の調子を表しているために、「背中は嘘がつけない」ということになるのです。

そして背骨や骨盤を矯正しても、根本原因である内臓不調を治さなければ体の歪みや痛みは治らないので、一時しのぎにしかなりません。
根本原因である内臓不調や様々な生活習慣、特に飲食物による影響を解決していく必要があります。

体は正直です

そういう理由で、手足の経穴も使いますが背中や腰の経穴も使って治療を行います。
そして患者さんの背中を触れば体調や生活習慣がわかるので、嘘がつけないということになります。
逆に言えば、患者さんの体をしっかり見て治療が出来るということになります。

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整体指圧マッサージの他、主に鍼灸治療を行なっています。

参考資料
「目で見るからだのメカニズム」堺 章著(1989年大阪大学名誉教授)医学書院
「WHO/WPRO標準経穴部位」原著:WHO西太平洋地域事務局 監訳:第二次日本経穴委員会 医道の日本社